歯周病と全身のつながり

歯周病を一言で表すなら「細菌の感染により引き起こされる、歯の周りの炎症性疾患」です。歯周病の原因となるのは、「歯周病菌」とよばれる細菌群です。歯周病菌とは一種類の菌の名前ではなく、数百種類にもおよぶ「歯周病を起こす原因となる細菌」の総称です。

細菌が体内に進入することを菌血症といいます。お口の中、歯の周囲には常に細菌が常在しており、炎症を起こすと歯肉から容易に細菌が侵入してきます。その細菌が血流にのり、全身にまわって各臓器に定着すると何らかの全身疾患が引き起こされる場合があります。

健康な方では細菌は排除されやすいですが、疾患をお持ちの方や、高齢者の方などの免疫力が弱い方は細菌を十分排除できずに定着させてしてしまう恐れがあります。

以下が関わりの深い疾患の代表的なものになります。

・糖尿病

 

歯周病によって産生された物質はインスリン(=糖の分解を行う物質)の働きを妨げ体の中に糖が分解されずに糖尿病になったり、悪化したりします。

また、逆に糖尿病の方は体の毛細血管が脆くなるためにお口の中でも炎症(=歯肉炎)を起こしやすくなりそこから歯周病に悪化するという負のサイクルに陥ります。

・早産、低体重児出産

 

妊娠中の方は身体に様々な変化が起こります。お口の中も例外ではありません。妊娠されている方はつわりの時期にはなかなか臭いに敏感だったり吐き気があってお口のケアが難しいことがあります。また女性ホルモンが増えます。女性ホルモンが増えるとそれを栄養源にしている歯周病菌が増えたり、ホルモンの影響で細菌を洗い流すための唾液が減ってしまいます。それにより歯周病になるリスクが上がるのです。

歯周病による炎症で作られた物質が血管にはいり子宮に到達すると、刺激を与え子宮を収縮させる働きをします。子宮は刺激されたことにより出産予定日より前に子宮収縮を引き起こし早産、低体重児出産になると言われています。

・誤嚥性肺炎

 

高齢になると食べ物を飲み込むための喉の筋力が低下し、本来食道に入るものが、気管支に入ってしまうことがよくあります。本来であれば咳をすることで吐き出すことができますが、高齢者の場合、吐き出す力が弱いだけでなく、反射が遅くてむせる間もなく知らないうちに気管支に入ってしまっていることもあります。

それにより肺炎を起こしてしまいます。これを誤嚥性肺炎といいますが誤嚥性肺炎の患者さんの肺からは歯周病原細菌が多く見つかることから歯周病と肺炎に強い関係性があるとされています。

予防のためには高齢者に限らずお口をケアすることが大切です。

・心臓血管疾患

 

慢性的な歯周病により、歯周病菌が血管内に入り込み、心臓に送られます。

そこで歯周病菌が心臓の弁や内膜にとりついて感染をおこし、心内膜炎をおこします。

また、歯周病菌が心臓の血管にとりついて血栓を形成すると、血管が狭くなったり、血管内皮に傷が入ることにより動脈硬化をおこし、狭心症や心筋梗塞の発症リスクが高まります。

また、動脈硬化は心臓だけでなく、全身のあらゆる血管でおこる可能性があり、脳卒中などの発症リスクも高くなります。

歯周病は万病のもとでありまた、他の疾患からの合併症ともいわれており、多くの疾患と関わりがあることが研究によりわかってきております。

歯周病の予防に近道はなく毎日のこまめなお掃除と定期的なかかりつけの歯科での検診が重要になってきます。正しいケアを専門家に聞き継続的に予防しましょう。