2022/05/06

フッ素はインプラントに悪いのか?

長崎県諫早市の歯医者  「諫早ふじた歯科・矯正歯科」理事長の藤田です

今回はインプラントとフッ素の関係についてです。

フッ素は虫歯予防に効果的な非常に優れた物質です。

インプラント治療をされた方は、「フッ素を使用してはダメだ」と思われている方も少なくはないと思います。当時の学会がそういう見解を示していたため当院でも一時期そういうふうに患者様へお話ししていました。

でも時代と共に異なる見解が発表されることも多いです。

結論から申し上げますと、インプラントに対してフッ素入りの歯磨剤を使用しても全く問題はありません。むしろ良い効果があるという報告もあります。

ではなぜ一般的にフッ素がインプラントに悪いと思われているのでしょうか。その理由を説明いたします。

 

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~フッ素がインプラントに悪い影響があるとされていた理由~

2016年11月、フッ素研究会にて次のような発表がありました。

「純チタンやチタン合金の試験片を各種の歯磨剤やフッ素塗布剤などに浸漬した試験の結果、9,000ppmの以上の高濃度フッ素を含有するフッ素塗布剤では著しいチタンの腐食が認められ、pHと溶存酸素濃度が低い口腔内環境では、さらにチタンの腐食が進むとされました(ConsumaerNet.Jpより引用)」

つまり、インプラントに主に使用されているチタンが高濃度のフッ素によって腐食したということです。

のちにフッ素研究会が「2017年まで9,000ppmを誤って900ppmと掲載していた」ことを訂正し、お詫びのコメントも公式サイトで発表しました。

その時の誤情報が原因となり今日までインプラントにフッ素が悪影響を及ぼすという考えが依然と残っているというわけです。

フッ素研究会の発表内容に間違いはありましたが、そもそもフッ素研究会が注意を促しているフッ素濃度9,000ppmは、国内で販売されている歯磨き粉では存在し得ない数値です。日本国内の製造販売認証基準では、フッ素濃度は1,500ppm未満とされていて、それ以上の濃度のフッ素は歯科医院でしか取り扱うことができません。

当院では希望がある方にはメンテナンスで来院された際に、9,000ppmのリン酸酸性フッ化ナトリウムというフッ化物を塗布させていただいておりますが、インプラントがお口の中にある方に対してはインプラントの周りにワセリンを塗って保護するなど工夫をして行っております。

高濃度のフッ素は確かにインプラントに対してよくはありません。もちろんお口の中がほとんどインプラントの方にはフッ素の使用によるメリットはほとんど無いと考えて差し支えないです。

ただ、もともと歯を失ったのは「虫歯」が原因の方も多いと思います。1本のインプラントを守るためにフッ素を使用しないことは、それ以外の多くのご自身の歯に対してフッ素を使用しないこと同義です。それではせっかく残っている健康な歯が虫歯になってしまいます。なのでフッ素入りの歯磨剤を使用するかどうかはご自身のお口の中のインプラントと天然歯の本数のバランスを考えて決めることが必要です。

~インプラントにもフッ素の使用によってメリットがある理由~

2015年に日本口腔衛生学会より以下の発表がありました。

「フッ化物配合歯磨剤はむしろチタン材へのミュータンス菌の付着を抑制しているとの研究は注目すべきである 。チタン材を使用しているインプラント装着者や矯正治療患者においても、フッ化物配合歯磨剤の利用を控えるべき科学的根拠は認められなかったことと、 学術的根拠の明らかな齲蝕予防効果から、天然歯を有する限り、フッ化物配合歯磨剤の利用はチタン製歯科材料使用者にも推奨すべきである。」

以上が文献の抜粋です。

参考:フッ化物配合歯磨剤の利用はチタン製歯科材料使用者にも推奨すべきである

要するに、チタン表面においても歯周病や虫歯の原因となる細菌がフッ素の使用によって減少するという研究結果が出たという意味です。

〜インプラント治療後の歯磨剤(歯磨き粉)の選び方〜

ここまででインプラントのメンテナンスにおいてフッ素が総合的に優れた効果を発揮してくれることがお分かりになったと思います。

ここからはインプラント治療後にどのような歯磨き粉を使用するのが良いのかを解説します。

結論から申し上げますと、粒子の洗い研磨剤が入った歯磨き粉は避けた方が良いです。

理由として

・インプラントと歯茎の間に研磨剤が入り込んでしまうとインプラント周囲炎というインプラントの周りの歯周病を起こす可能性がある

・インプラントの表面を粗造にすることで菌が付着しやすい環境になってしまうことがある

の2点が挙げられます。

成分表示としては、「炭酸」や「ケイ酸」などと書いてある商品は避けた方が無難です。

これらの成分が入っていない歯磨き粉を使用することでご自身のインプラントの寿命を伸ばすことができます。

研磨剤が入っていないことで歯の表面が着色しやすくなるので、気になる方は定期的に歯科医院で着色を落としてもらいましょう。

まとめ

インプラントとフッ素についてのお話は以上です

インプラント以外にも何かご不明点や不安な点などありましたら気軽にスタッフにお尋ねください。

 

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