妊娠中でも歯科治療で使える麻酔はありますか?安全性と注意点を歯科医師が徹底解説
諫早ふじた歯科・矯正歯科の藤田です。今日は妊娠中の歯科治療で妊婦さんが気になることに関してです。
「妊娠中に急に奥歯が痛み出した」「親知らずが腫れてしまったけれど、麻酔を使っても赤ちゃんに影響はないの?」
これは、妊娠中の患者さんから歯科医院のカウンセリングで最も多く寄せられる切実な悩みの一つです。妊娠中は、食べるもの一つ、飲み薬一つに対しても「赤ちゃんに何かあったらどうしよう」と慎重になるのは、母性としての素晴らしい本能です。
しかし、結論から申し上げます。 **「妊娠中でも、歯科治療における局所麻酔は安全に使用することができ、むしろ放置するリスクの方が高い場合が多い」**のです。
この記事では、諫早ふじた歯科・矯正歯科の視点から、妊娠中の歯科麻酔の安全性、胎児への影響、そして時期ごとの注意点について、詳しく、分かりやすく解説していきます。

1. なぜ「妊娠中の歯科治療」は我慢してはいけないのか
多くの妊婦さんが「出産まで我慢しよう」と考えがちですが、実は歯科トラブルの放置には大きなリスクが伴います。
炎症は全身を巡る
歯ぐきの腫れ(歯周病)や虫歯の悪化による化膿は、お口の中だけの問題ではありません。炎症物質や細菌が血管を通じて全身に回ることがわかっています。
早産・低体重児出産のリスク
特に進行した歯周病は、プロスタグランジンという物質を過剰に産生させます。これが子宮の収縮を促し、早産や低体重児出産のリスクを通常の7倍以上に高めるというデータもあります。
ストレスによる母体への負担
「痛みを耐え続ける」ことは、お母さんの体に強いストレスを与えます。アドレナリンが過剰に分泌され、血圧の上昇や胎盤への血流への影響を及ぼす可能性があるため、適切に麻酔を使って痛みを取り除いた方が、結果的に赤ちゃんにとっても安全なのです。
2. 妊娠中に使われる歯科麻酔「リドカイン」の安全性
歯科医院で一般的に使われる麻酔は「局所麻酔」です。
局所麻酔と全身麻酔の違い
外科手術などで意識を失わせる「全身麻酔」とは異なり、歯科の麻酔は「神経の末端に作用して、一時的に痛みを感じさせなくする」だけのものです。薬が作用するのは注射をした周囲数センチのみであり、全身を巡る量は極めて微量です。
最も信頼されている「リドカイン(キシロカイン)」
歯科治療で最も頻繁に使用されるのは**「リドカイン(商品名:キシロカインなど)」**という薬剤です。 この薬は以下の理由から、妊婦さんへの使用が認められています。
- 胎盤を通過しにくい: 薬剤の分子構造や性質上、赤ちゃんに届く量は無視できるほどわずかです。
- 速やかな分解・排出: 肝臓で速やかに分解され、尿として排出されます。体に蓄積されることはありません。
- 豊富な臨床実績: 数十年にわたり、産婦人科での処置や歯科治療で使用されており、奇形や発育不全などの報告はありません。
3. 「血管収縮剤(アドレナリン)」が含まれている理由
歯科麻酔のカートリッジには、多くの場合「エピネフリン(アドレナリン)」という血管収縮剤が少量含まれています。これを聞くと「興奮剤ではないか?」と不安に思う方もいるかもしれません。しかし、これには明確なメリットがあります。
- 麻酔を長持ちさせる: 血管を収縮させることで、麻酔薬がその場に留まり、少量でしっかり効くようになります。
- 出血を抑える: 手術や抜歯の際の出血を減らし、安全な処置を可能にします。
- 毒性を下げる: 急激に血中に麻酔薬が吸収されるのを防ぐため、むしろ安全性は高まります。
【もし不安な場合は?】 歯科医院には「血管収縮剤なし」の麻酔薬(スキャンドネストなど)も用意されています。高血圧の方や、過去に麻酔で動悸がした経験がある方は、事前に相談することで薬剤を使い分けることが可能です。
4. 妊娠時期(ステージ)ごとの歯科治療ガイドライン
妊娠期間は大きく3つの時期に分けられ、それぞれ治療の優先順位が異なります。
① 妊娠初期(〜15週:1ヶ月〜4ヶ月頃)
この時期は、赤ちゃんの脳や心臓といった重要な器官が作られる「器官形成期」です。
- 治療の原則: 原則として応急処置に留めます。
- 麻酔の判断: 激痛や強い炎症がある場合は、最小限の麻酔を使用して痛みを取り除きます。
- 注意点: つわりがひどい時期でもあるため、無理に治療を進めることはしません。お口を開けているだけで気分が悪くなる場合は、安定期を待ちます。
② 妊娠中期(16〜27週:5ヶ月〜7ヶ月頃)
いわゆる「安定期」です。
- 治療の原則: 歯科治療に最も適した時期です。 虫歯治療、抜歯、歯周病の集中ケアなど、麻酔が必要な処置はこの時期に済ませてしまうのがベストです。
- 麻酔の判断: 通常通りの使用が可能です。
- 注意点: 治療中に体調が悪くなったら、遠慮なく合図をしてください。
③ 妊娠後期(28週〜:8ヶ月〜出産まで)
出産に向けて体が準備を始める時期です。
- 治療の原則: 緊急性のない治療は出産後に延期します。
- 麻酔の判断: 痛みがある場合は使用可能ですが、長時間の処置は避けます。
- 仰臥位低血圧症候群への配慮: 大きくなったお腹(子宮)が下大静脈を圧迫し、仰向けで寝ると血圧が下がって気分が悪くなることがあります。治療の際は椅子を完全に倒さず、少し角度をつけた状態で処置を行います。
5. レントゲンや飲み薬についての補足
麻酔と同じくらい心配されるのが「レントゲン」と「処方薬」です。
歯科用レントゲンの安全性
歯科のレントゲン撮影で浴びる放射線量は、1年間に自然界から受ける放射線量の数百分の1以下です。しかも、撮影部位はお口であり、お腹には鉛の入った「防護エプロン」を着用するため、胎児への被曝は実質ゼロと考えて間違いありません。
痛み止め・抗生剤について
麻酔を使用した後に、薬が必要になることがあります。
- 痛み止め: アセトアミノフェン(カロナールなど)は、妊娠中も比較的安全に使用できる代表的な薬です。
- 抗生剤: ペニシリン系やセフェム系など、胎児に影響が出にくい種類を選択します。
※いずれも、産婦人科の主治医と連携をとりながら慎重に処方いたします。
6. 諫早ふじた歯科・矯正歯科から妊婦さんへのメッセージ

私たちは、お母さんの健康が赤ちゃんの健康に直結していると考えています。妊娠中だからといって、痛みを一人で抱え込まないでください。
当院では、以下のことを徹底しています。
- 完全予約制・待ち時間短縮: 長時間の滞在による疲労を最小限にします。
- リラックスできる環境作り: 緊張は痛みを強く感じさせます。リラックスしてお話しできる環境を整えています。
- 産婦人科との連携: 必要に応じて、かかりつけの産婦人科の先生と連絡を取り合い、安全を確認した上で治療を進めます。
- 予防歯科の強化: 妊娠中はホルモンバランスの変化で歯ぐきが腫れやすくなります。麻酔を使う治療が必要になる前に、クリーニングで「マイナス1歳からの虫歯予防」をサポートします。
7. まとめ|「安心」も一つの治療です
「妊娠中の歯科麻酔は、正しく使えば安全である」ということを知っていただくだけで、痛みのストレスは少し軽くなるはずです。
- リドカインは世界中で認められた安全な麻酔薬です。
- 安定期(妊娠中期)であれば、ほとんどの歯科治療が可能です。
- 痛みを我慢するストレスの方が、赤ちゃんへの悪影響が懸念されます。
もし今、歯の痛みや違和感に悩んでいるなら、どうか勇気を出して一度ご相談ください。私たちは、あなたと赤ちゃんの笑顔を守るパートナーでありたいと願っています。
ご予約・お問い合わせについて
諫早ふじた歯科・矯正歯科では、お電話またはWeb予約にてご予約を受け付けています。初診の際は、ぜひ「母子健康手帳」をお持ちください。
📞 お電話でのご予約・お問い合わせ 0957-43-2212 (「ブログを見て、妊娠中の治療について相談したい」とお伝えいただくとスムーズです)
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歯科医師より一言: 妊娠中にお口の環境を整えることは、生まれてくる赤ちゃんの虫歯リスクを下げることにもつながります。お母さんのお口を綺麗に保ち、万全の態勢で出産を迎えましょう!

