2026/02/13

親知らずは必ず抜くべきですか?

親知らずは必ず抜くべきですか?

抜歯の基準・リスク・費用・寿命まで徹底解説

「奥歯の奥がムズムズする」「鏡で見たら、一番奥に新しい歯が見える」 10代後半から20代にかけて生えてくる「親知らず」。歯科医院で最も多くいただくご相談の一つが、**「親知らずは必ず抜かなければいけないのですか?」**という質問です。

結論から申し上げますと、親知らずは「必ず抜く歯」ではありません。 しかし、現代人の顎の進化や食生活の変化により、親知らずが正しく機能しているケースは少なく、むしろ「残しておくことで他の健康な歯を寿命を縮める」リスクを抱えている方が多いのが実情です。

この記事では、親知らずの基礎知識から、抜歯の判断基準、放置するリスク、そして気になる抜歯後の経過までを解説します。

親知らず

1. 親知らず(第三大臼歯)とは?

親知らずは、専門用語で「第三大臼歯(だいさんだいきゅうし)」、または「智歯(ちし)」と呼びます。

なぜ「親知らず」と呼ぶのか

昔の人の寿命は今より短く、この歯が生えてくる20歳前後には親はすでに亡くなっている、あるいは親が知らない間に生えてくることから「親知らず」という名がついたと言われています。英語では「Wisdom Tooth(知恵の歯)」と呼ばれ、物事の分別がつく年齢に生える歯とされています。

親知らずが生える本数

親知らずは、上下左右の最も奥に1本ずつ、合計4本あります。 ただし、これには個人差が非常に大きく、以下のようなパターンがあります。

  • 4本すべて綺麗に生える人
  • 4本あるが、骨の中に埋まったままの人
  • もともと4本揃っていない人(欠損)
  • 1本も存在しない人

最近の調査では、顎が細くなった現代人は親知らずが最初からない「先天性欠損」の割合が増えているとも言われています。

2. 「抜かなくてよい親知らず」の4つの条件

「歯医者に行ったらすぐに抜かれる」と不安に思う方もいらっしゃいますが、以下の条件を満たしている場合、私たちは「抜かずに大切に残しましょう」とお伝えします。

① 真っ直ぐ生えていて、上下で正しく噛み合っている

親知らずが他の奥歯と同じように垂直に生え、上の親知らずと下の親知らずがカチッと噛み合っている場合です。この状態であれば、食事の際の咀嚼(そしゃく)に貢献しているため、抜く必要はありません。

② 完全に骨の中に埋まっていて、問題を起こしていない

レントゲンを撮ると親知らずが存在するものの、完全に歯茎や顎の骨の中に埋まっており、手前の歯を圧迫したり、炎症を起こしたりしていない場合です。この場合は、無理に手術をして抜く必要はなく、定期検診での経過観察となります。

③ 歯磨きが十分に届き、清潔が保たれている

親知らずが一番のトラブルメーカーになる理由は「不潔になりやすいから」です。もし真っ直ぐ生えていて、ご自身でしっかりブラッシングやフロスができ、虫歯や歯周病のリスクが低いのであれば、残しておいても問題ありません。

④ 将来的に「移植」や「ブリッジ」の土台として使える可能性がある

もし他の奥歯が虫歯などでダメになってしまった際、健康な親知らずが残っていれば、それを欠損部分に「移植(自家歯牙移植)」したり、ブリッジの支台として利用したりできる場合があります。これは、天然の歯を残しているからこそできる「予備のパーツ」としての活用法です。

3. 「抜いたほうがよい親知らず」のパターンと放置リスク

一方で、歯科医師が抜歯を強く推奨するのは、**「今痛くなくても、将来的に他の歯を巻き添えにしてダメにする」**と判断した場合です。

パターンA:横向き・斜めに生えている(水平埋伏)

顎のスペースが狭いため、親知らずが横に倒れて手前の歯(第二大臼歯)の根元に突き刺さるような状態です。

  • リスク: 手前の歯との隙間に汚れが溜まり、手前の歯が深い虫歯になります。この場合の虫歯は非常に治しづらく、最悪の場合、親知らずだけでなく「手前の健康な寿命が長い歯」まで一緒に抜歯することになりかねません。

パターンB:歯茎が半分被っている(半埋伏)

歯の頭が少しだけ見えている状態です。

  • リスク: 歯と歯茎の間に深いポケットができ、そこに細菌が繁殖します。これを「智歯周囲炎(ちししゅういえん)」と呼びます。一度腫れると、体調不良やストレスのたびに再発し、顔が腫れ上がるほどの激痛を伴うこともあります。

パターンC:上の親知らずが伸びてきている

下の親知らずが埋まっているのに上の親知らずだけ生えている場合、噛み合う相手がいないため、上の親知らずがどんどん下の歯茎に向かって伸びてきます(挺出:ていしゅつ)。

  • リスク: 伸びた歯が下の歯茎を噛んで傷つけたり、顎を動かす際の邪魔になって顎関節症を引き起こしたりすることがあります。

パターンD:嚢胞(のうほう)ができている

稀に、骨の中に埋まっている親知らずの周囲に「袋のような影」ができることがあります。これは嚢胞と呼ばれ、放置すると骨を溶かして大きく成長してしまうため、早期の摘出と抜歯が必要です。

4. なぜ「若いうちに抜く」のが正解なのか?

親知らずの抜歯において、**「年齢」**は非常に重要な要素です。多くの歯科医師が20代前後での抜歯を勧めるのには、医学的な理由があります。

1. 骨の柔らかさ

若いうちは顎の骨が比較的柔らかく、歯を支える靭帯も柔軟です。そのため、抜歯自体がスムーズに終わり、身体への負担が少なくて済みます。30代、40代、50代と年齢を重ねるごとに骨は硬く密になり、歯が骨に癒着(ゆちゃく)しやすくなるため、抜歯の難易度と時間が上がります。

2. 回復力の違い

若い世代は細胞の活性が高いため、抜歯した後の穴(抜歯窩)が塞がるのが早く、感染症のリスクも低いです。年齢が上がると、どうしても傷の治りが遅くなり、痛みや腫れが長引く傾向にあります。

3. 全身疾患のリスク

高齢になってからの抜歯は、高血圧や糖尿病、骨粗鬆症の薬(BP製剤など)の服用がハードルになることがあります。持病が増える前に、心身ともに健康な状態で済ませておくのが賢明な判断と言えます。

5. 親知らず抜歯の不安を解消!痛みと期間について

「抜歯=怖い、痛い」というイメージをお持ちの方も多いでしょう。現代の歯科医療では、その負担を最小限に抑える工夫がなされています。

痛みへの対策

抜歯中の痛みは、適切な麻酔によってほぼゼロに抑えることができます。当院では麻酔自体の痛みにも配慮し、表面麻酔や極細の針を使用しています。 痛みが心配なのは「麻酔が切れた後」だと思いますが、鎮痛剤を適切に服用することで、日常生活に支障がない程度にコントロール可能です。

腫れについて

腫れのピークは抜歯後2〜3日後です。特に下の歯を深く切開して抜いた場合は、1週間程度「おたふく風邪」のように腫れることがありますが、これは生体反応として正常な経過です。大事な予定(結婚式や面接、プレゼンなど)の直前は避けるのがベストです。

6. 親知らずを放置することで起こる「意外なトラブル」

「今は痛くないから放置」している間に、お口の中では目に見えない変化が進行しています。

歯並びが悪くなる

横向きに生えた親知らずが手前の歯をグイグイと押し続けることで、前歯の歯並びがガタガタになってしまうことがあります。「昔は綺麗だったのに、最近前歯が重なってきた」という原因が親知らずだった、というケースは少なくありません。

口臭の原因

親知らず周辺は、どんなに丁寧に磨いても汚れが残りやすい場所です。そこで繁殖した細菌が膿(うみ)を作り、強い口臭を発生させることがあります。

妊娠・出産期のトラブル

女性の場合、妊娠中にホルモンバランスが変化し、歯茎が腫れやすくなります(妊娠性歯肉炎)。しかし、妊娠中はレントゲン撮影や薬の服用に制限が出るため、親知らずが激しく痛み出しても積極的な処置ができないというジレンマに陥ります。

7. 抜歯の費用と時間の目安

当院での親知らず抜歯は、基本的に保険診療が適用されます。

  • 費用(3割負担の場合):
    • 通常の抜歯:約2,000円〜3,000円程度
    • 横向きや埋まっている歯の抜歯:約4,000円〜7,000円程度
    • ※初診料、レントゲン、CT撮影、お薬代などは別途かかります。
  • 所要時間:
    • 簡単なケース:15分〜30分
    • 難しいケース:30分〜60分

8. まとめ:あなたの親知らずの「現在地」を知りましょう

親知らずは、生涯にわたって付き合っていく可能性のある歯です。しかし、それが「宝物」になるか「爆弾」になるかは、生え方とケアの状態によります。

私たちが一番避けたいのは、**「もっと早く抜いておけば、手前の大切な歯を失わずに済んだのに…」**という後悔です。

「自分の親知らずは抜くべき?残すべき?」 その答えを知るためには、まずは歯科医院での専門的なチェックが必要です。当院では最新のデジタルレントゲンやCTを用い、神経の位置や根っこの形を正確に把握した上で、最適なアドバイスをさせていただきます。

「痛くなってから行く場所」ではなく、「将来の健康を守るための確認」として、ぜひ一度お気軽にご相談ください。

医院情報

長崎県諫早市多良見町中里129-14

医療法人 夢昂会 諫早ふじた歯科・矯正歯科

電話番号 0957-43-2212

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